Special Interview

特別対談

  1. HOME
  2. スペシャルインタビュー
  3. 桑原正守 × 畠山良太

“日本一”をW獲得した男が“世界一”の桑原正守氏に聞く「営業マンの未来」

営業の道を極めようとする恩恵は、
成功ではなく幸福である——。
現代のセールスパーソンの教育・育成に見る問題、
これからの営業のあるべき姿、
そしてその魅力とは。
世界80カ国で展開されている
能力開発プログラムの販売で
世界一に輝いた桑原正守氏に、
昨年日本一の営業タイトルを複数獲得した
(株)Ishizue 代表取締役の畠山良太が
聞きました。

目次

新型コロナ禍でより輝きを増す「確からしさ」
成果を出せる人と出せない人の相違点
営業マンの育成に必要な「オーダーメイド」の視点
営業力を磨く。その恩恵とは…
営業は傷つく仕事。一番傷つく者が、一番輝ける

新型コロナ禍でより輝きを増す
「確からしさ」

 畠山   貴重な機会を頂き有難うございます。今日は、これからの時代の営業のあり方について、お考えを伺いたいと思っています。早速ですが、まずこの度の新型コロナウイルス蔓延に伴って、世の中の営業マンはなかなか思うような活動ができず、不安を抱えていると思います。桑原さんは、この現状をどう捉えていますか。
 桑原   そうですね~本質的な面ではコロナ騒動の前後で大きく変わる事はない気がします。対面での営業がやりにくいというのはもちろんその通りですが、もはやそもそも、靴底をすり減らしてお客様の元へ足を運ぶという時代ではありませんでしたから。心を開いていない人に何をどう伝えてもアクションには繋がらないのです。だから、私のコンサルティングでは、まず最初に「誰が売るか」が一番重要だとお話ししています。戦後の物資が不足していた時代は「何を売るか」が重要でした。また、高度経済成長で企業も家計も懐事情が満たされていた時代は、繰り返し足を運び、どのように“お得感”をみせるかという「どのように売るか」が重要でした。しかし、今は買い手も売り手も迷っている時代です。大手も不祥事を起こす、トレンドも目まぐるしく移り変わる、物もサービスも溢れている。誰も何をもって確かなのかがわからないでいる。新型コロナウイルスの蔓延でこの混迷にさらに拍車がかかって、一体どうすればいいのか、何を決断すればいいのか、不安を増しているのはむしろお客様のほうでしょう。そんな時代にお客様の判断基準となるのは、「これなら確かなんじゃないかな〜」と思わせる“確からしさ”です。それは、営業マンの頼もしい表情や話し方、堂々とした所作から伝わる安心感なのです。対面の機会が少なくなり移動時間がなくなったならば、それこそ話法や立ち居振る舞いに磨きをかけるチャンスといえるのではないでしょうか。
 畠山   なるほど~“確からしさ”ですね。思い返してみると、桑原さんに最初にお目にかかった時も、まさに“確からしさ”に溢れていた気がします。大学生の時、講堂で講演されているのを聴いて、営業という仕事についてとても熱く語られている姿には、強烈なインパクトがありました。
“日本一”をW獲得した男が“世界一”の桑原正守氏に聞く「営業マンの未来」

成果を出せる人と出せない人の相違点

 桑原   あれは2008年でしたか。あの当時、既にフルコミッションとして25年キャリアがありましたし、また、数々の営業マントレーニングも展開して、どういう人が成果を出し、どういう人が苦しむかも、よく見てきました。営業において何が大切かは熟知していましたから、それが“確からしさ”として映ったのかもしれませんね。
 畠山   はい!本当にあの時あの講演のインパクトは強烈でした(笑)。私自身が現場でチャレンジし続けて、そこで磨きをかけた机上の空論でないノウハウをクライアント様へ届けるという桑原さんのスタイルにあの時に憧れ、現在は自身が営業活動をし続けながら、“セールスセコンド”という営業マントレーニングを事業展開しています。桑原さんからみて、実際成果が出る人と出ない人ではどういう違いがあるとお考えでしょうか。
 桑原   端的に言えば、心理学を抑えているかですかね。といってもアカデミック、学術的なものとは異なります。文字に表した通りの、心の理(ことわり)を学ぶという事です。喜び、悲しみ、怒り、笑いという結果には、必ず原因となる起点やパターンがある。それをすっ飛ばして人が動く事はありません。営業もしかり、人間関係もしかりです。お話を聞いてもらえる心が開いた状態をどうやって作るか。また、どのようにイメージを湧かせ「ぜひやらせて下さい」とお客様に言ってもらうか。そこを抑えなければ、例えどれだけ頭を下げ続けても、会社のパンフレットを開き続けても決して契約に繋がる事はないと思いますから。
 畠山   確かに心理を抑える事は、とても大切な事ですよね。しかし、多くの企業の営業マン教育は、まだまだトークを覚えさせるという傾向が強く、心理という人間関係のベースを学ばせる事は少ないような気がしています…。また相手のアクションに繋げる為には、心理の知識という土台だけでなく「どう表現するか」という営業マン側の感受性や共感力を育てる事が大切になりますよね?
 桑原   おっしゃる通りです。これは、国の教育制度にも問題があるのだと思いますが、自分がどう感じるか、どうやって心を表現するか、そういう事をむしろ押さえ込むような教育が、私の子供時代はもちろん、今なお続いています。これでは感受性は育ちません。営業マン育成をお引き受けし、ロープレをしてみると、無表情でリアクションの小さい人が本当に多いんです。お客様がせっかく悩みを吐露してくださっているのに、それを聞いても営業マンの表情が動かない。そうすると、お客様は無視されているように感じて、心を閉ざしてしまうのです。無視は、いじめの最たるものですよね?相手の心理には一気に不安、不信というネガティブな気持ちがはびこってしまいます。相手の心をどれだけ捉え、その事をしっかり表現し、相手の心を動かすか。「仕事はもちろん人生においてもこれほど大切な事はない!!」と思い、私は心を動かす事に特化した研修プログラムを開発したのです。従来の教育に欠けているこの点さえ理解し、スキルとして落としこめれば、壁にぶつかっている営業マンの方の商談現場も成果へと繋がっていくはずです。
 畠山   本当にお陰様でダメダメ営業マンだった私も、そのプログラムに自己投資して学び、自分が描いていた以上の未来、成果をつかむ事ができました。その時に“今の時代に機能する教え”を学ぶ事がとても大切だと心底感じましたね。だからこそ、その“教え”を知らないで苦労している世の中の営業マンに一人でも多く伝えたいと想いますね!
 桑原   畠山さんは初めてお会いした時に、すぐ感受性の豊かな方だと感じましたよ。あと、まっすぐで素直ですね。だからこそ、プログラムで学んで3か月という短期間で成果に繋げ、前職のリクルート時代でもトップセールスとして何回も表彰されたんでしょうし、さらに独立してからも日本一の営業タイトルも複数獲得されたんだと思います。成果が出ている教え、情報、ノウハウに対して、斜に構えず素直によく耳を傾け、現場ですぐ試してくれる。人生を上がり目にする人の大事な要素だと思いますよ。
“日本一”をW獲得した男が“世界一”の桑原正守氏に聞く「営業マンの未来」

営業マンの育成に必要な
「オーダーメイド」の視点

 畠山   お褒めの言葉嬉しい限りです!有難うございます!また、これは私自身もお聞きしたい事なのですが、長年、営業マンの教育・育成に携わられてきた桑原さんの目から見て、営業マン育成で一番大切な事は何だとお考えですか。
 桑原   営業マンを一括りにしない事ではないでしょうか。営業マンは人です。人はみな一人ひとり違う個性を持っています。長じているところもあれば欠けているところもあって、そこはみんな違うのです。であれば、教育もオーダーメイドであるべきはずです。一冊マニュアルを読めば、どんな人でも優れた営業マンになれるなどという事はありませんよね。
 畠山   なるほど。そこは重要なポイントですね。自分の力でなんとかしようとすると、自分を客観視できなくて、優れたところ、劣っているところがどこかがなかなか見えません。私自身、成績が出ず苦しんでいたときは自力を過信して、結局間違った方向に進んでいた気がします。
 桑原   他力本願という言葉は、他人頼みととられて、あまりよい印象を持たれていませんが、決してそんな事はありませんよね。先人が先に苦労して編み出したノウハウをお借りして、また他人の目をお借りして、自分を高めていけばよいのです。そもそも人類はそうやって歩んでいる訳でしょ?ギターのコードを自分で編み出せって言われたら大変ですよ!!
“日本一”をW獲得した男が“世界一”の桑原正守氏に聞く「営業マンの未来」

営業力を磨く。その恩恵とは…

 畠山   私自身の営業キャリアも12年になりました。その中で、営業という道を追求する事で得た恩恵を沢山感じていますが、まさに営業を極められた桑原さんの立ち位置から感じる“営業力を磨く”恩恵を教えて頂けないでしょうか?現在、売れなくて困っている人も営業マンの励みにもなると思いますので。
 桑原   そうですね~、企業も個人も“営業とマーケティングを区別する”というポイントでしょうか。AIやITなどのテクノロジーが進化して、お客様の望みにぴったりのものが、いつでもスマートフォンに表示できるような時代になりましたよね。たしかに、現代のマーケティングツールは強力です。しかも日進月歩で進化している。正直、集客を増やし、一時的な売り上げを上げる事やスピード感だけを考えればこれでも十分かもしれません。しかし、そこに豊かな人間関係とか人としてのやりがいや幸福感はやっぱり生まれにくいと思うんです。一方で営業とは、じわじわとファンを増やし、コミュニティを広げ、永続的な成功に繋げていく事です。それには人間学、心理学、コミュニケーション力がもちろん必要ですし、時間がかかります。しかし、一見遠回りに見えるかもしれませんが、持続的な収益が期待できますし、さらに豊かな人間関係、信頼や絆というお金では計れない財産ややりがいを手に入れる事ができる。企業でも、個人でも、成功以上の幸福を考えた時、こんな営業とマーケティングを区別するという考え方もいいのではないでしょうか。
 畠山   今までいろんなお話をお聞きしてきましたが、“営業とマーケティングを区別する”というのは初めて聞きました。素敵なお考えだと感じましたし、自分の過去の歩みに対しても自信も深まりました。
営業を磨く恩恵は、豊かな人間関係からくる幸福であるというお話は本当に自身の体感をもって「そうだ!そうだ!」と共感しますね。AIやテクノロジーの時代に突入していく中で「営業なんかいらなくなるんじゃないか?」なんていう声も昨今出てきてますが、私はどの時代でも生き残る営業の特性を「相手の心の温度を上げる事」という言葉で理解しています。「○○さんに会うと元気出る、笑える、勇気が湧く、気分が晴れる、やる気が出てくる、癒される、和む」といった存在に営業マン自身がなる。つまり、相手の心の温度を上げるパーソナリティというか。そういう存在になれるかどうかが、これから社会における命綱だと私もトレーニングをする時は常々そう伝えています。
 桑原   そうです。そうです。それはきっとAIにはできないですし、そんな存在になれたら自分自身が一番嬉しいはずですよね!
 畠山   社会を変える!といった大きな事は出来ないかも知れませんが、ご縁があった方を大切にして、そのお一人お一人が笑顔になっていけば、自分自身も幸せに近づく。そういった商いをこれからも続けていきたいですし、そういうセールスマンシップをコツコツ世の中やマーケットに届けていければと思っています。
 桑原   畠山さんらしいお考えですね。とてもよいと思いますよ。
“日本一”をW獲得した男が“世界一”の桑原正守氏に聞く「営業マンの未来」

営業は傷つく仕事。
一番傷つく者が、一番輝ける

 桑原   私は、人として生まれた以上、一人ひとりの人生が輝く事が一番大事だと思っていて、営業という職種はそれに一番近づきやすい仕事だと思っています。
 畠山   それは、どういった理由でしょうか。
 桑原   営業は、一番傷つく仕事。基本的には契約まで何件も断られますし、せっかく契約をとったのにそれをキャンセルされるという痛い思いもする。クレームを受けて謝りにいくのも営業です。その度に心は傷ついて、痛みます。でもね、金属でも宝石でも磨いてきれいに輝かせようと思ったら、まずはこすって傷つけるじゃないですか。最初に荒いヤスリで傷をつけて次第に細かい目に替えて、最後はポリッシュで磨き上げる。つまり、磨くのファーストステップは傷つける事なんです。だからこそ、傷つきたくないとリスクをさけていたら、永遠に輝きには近づけないんです。そう考えると、営業は自分を磨き、人生を輝かせる一番の道だと思いませんか??営業を志した方は、ぜひこの考え方を覚えておいてほしいですね。
 畠山   「断られたり、冷たくされたり、怒られたりと傷つくたび、自分が磨かれているんだ!」と思える。営業マンだけでなく多くの人が非常に勇気をもらう解釈ですね。できる限り多くの人に伝えていきたいと思いました!改めて、本日は貴重な機会を有難うございました。私自身とても勉強になりましたし、憧れの桑原さんとこのような機会を頂けてとても嬉しかったです。またぜひよろしくお願いいたします!
“日本一”をW獲得した男が“世界一”の桑原正守氏に聞く「営業マンの未来」

最近の対談記事