営業は永遠に残り続ける仕事である・・・。
その営業で成果を上げるために大切なポイント、
そして、営業の世界で活躍し続ける秘訣とは。
世界最年少でTOT入会を果たして以来、
通算で10回TOTを達成している足立哲真氏に、
昨年日本一の営業タイトルを複数獲得した
(株)Ishizue 代表取締役の畠山良太が聞きました。
目次
● 成果に対して“素直”になること
● 人に対して興味を持つか、
成果に対して興味を持つか
● 営業は永遠に残り続ける仕事である
● “凡事徹底”こそが最強のスキル
● 数値目標よりも“価値目標”を設定せよ
成果に対して“素直”になること
畠山 今日の対談をすごく楽しみにしていました。よろしくお願いします。早速、お聞きしたいのですが、足立さんは金融サービスのプロフェッショナルとして成功の一つの指標であるMDRT(Million Dollar Round Table)の最上位メンバーであり、MDRTの6倍の基準を誇るTOT(Top of The Table)に通算10回入会し、若干36歳にしてTOT終身会員となっていますが、その秘訣はすばり何でしょうか?
足立 一言で言えば、基準値の違いでしょうね。最初に入社した会社の社長が、TOTの10倍に該当する6億円とか7億円を1人でやる人でしたので、自ずとそれが普通だという基準値になりました。そのお陰で周りから「凄いね」と言われて天狗になることもなく、「自分はまだまだ」だと思えたのかもしれません。
畠山 それは今思うとラッキーな出会いでしたね!基準値の高い人と付き合うことによって、自分の当たり前の基準値を上げていく。とても大切なポイントですね。では、一般の人が営業で成果を上げるために一番重要なことって何でしょうか?
足立 成果に対して“素直”になることですね。成果が出ると言われていることを素直に実践するスタンス、自分が掲げた目標に対して素直に向かうことです。
畠山 なるほど。成果を出す人は確かに素直ですね。変な自己流もないし、いい意味で手段を選ばないですしね。では、素直になれない人の共通点は何だと思いますか?
足立 素直になれない人は自己中心的というか、とにかく我が強いです。本人は自己中だとは思っていないかもしれませんが、潜在意識の中ではいつも自分が中心です。すぐに「自分には合わない」とか「そんなことやってもどうせダメだろう」とか、やる前から言いますし。売れていない自分を自己正当化し、無意識に守ってしまいます。
畠山 「自分はそんなキャラじゃない」とか言いますよね。自分がかわいい、傷つきたくない、コンフォートゾーンにとどまっていたい。そんな人たちに、どういう教育アプローチをしているのですか?
足立 私が関わっていくのは、“何故”の部分です!「何故やっているのか?」「何のためにやっているのか?」「誰のためにやっているのか?」が重要だと思います。それでもできない人は、ある一定の期間、型にはめるしかないですね。行動目標と期限を細かく決めて、それを黙々とこなしてもらう。そして私は鼓舞をしながら伴走をする。
畠山 なるほど。型にはめていく。体で覚えさせる。そういう環境にはめてあげる。面白いですね。
人に対して興味を持つか、
成果に対して興味を持つか
畠山 素直以外に、成果を早く出すにあたって大切なキーワードって何かありますか?
足立 成果を出すのが早い人は、人に対する興味が強いです。私も最初は営業のやり方がわからなかったので、先輩に同行してもらいました。すると、その先輩は挨拶をして名刺交換を終えたら、いきなり保険の説明をし始めたんです。その時が一番衝撃的でしたね。「何でこの先輩は、お客様のことを何も聞かずに説明してるんだろう?」って驚きました。理解できなかったですし、非常に違和感がありましたね。営業は未経験でしたが、「お客様の悩みを聞くのが最初だろうな」とイメージしていたものですから。人に興味が持てない人は、やっぱり人の話を聞けないんですよね。
畠山 そうですよね。人は話をしたい、聞いてもらいたい生き物ですしね。人に興味を持っているほうが感情移入して話を聞くことができるし、話しているお客様も気持ち良くなりますから、結果として売れるようになると思います。では、人に興味を持てない営業マンに対して、どのような指導をしていますか?
足立 人に興味を持てない場合には、「成果に興味を持ってください」と言っています。成果にすら興味を持てない人は、もうどうしようもないです。「成果も出したくありません」と言われたら、「じゃあ、営業は辞めて、仕事を変えようか」と言うしかありません(苦笑)。
畠山 なるほど。それ、すごいピンときました!私は前職のリクルート社の時に、女性ばかりの部署に配属した経験があったのですが、その時に感じたのが、女性のほうが人に興味を持てる素地があるなということ。反対に男性のほうが成果に興味を持てるけど、人に興味を持てない傾向があるのかもしれないなと。
足立 人と関わって自分の欲を満たす人と、成果を出して自分の欲を満たす人。大きく分けると2つのパターンがありますが、どっちのアプローチでも全然いいと思います。最終的な目的は結果を出すことなので、どちらのほうが本人にとってやりやすく、力を発揮できるかが大事です。
畠山 なんか、凄いしっくりきました。私が感じている、成果を出す人と出さない人の違いの一つに“悔しさの感度”というのがあります。成果を上げる人は悔しさを強く感じることができてますが、成果を出せない人は、例えば、後輩が自分より結果を出しても悔しくないとか。それだと、変化するとか成長するとかって難しいかなっと。
足立 それはありますよね。これに関しても、2パターンあると思います。私は人と比較したり比較されたりするのが嫌なタイプなんですよ。「おい、あいつは頑張っているのに、お前は負けているぞ」って言われても、「ええ、まあ、そうですね」っていう感じで。昔から自分は自分、他人は他人という考え方です。その代わり自分が立てた目標の達成に関しては、並々ならぬモチベーションがあります。
畠山 へえ、そうなんですね。他人に負けて悔しいから切磋琢磨していくタイプと、自分の理想に届かず悔しいから自己研鑽していくタイプ。いずれにしても「悔しい」というエンジンが搭載されている人といない人では、馬力が全然変わりますよね。
営業は永遠に残り続ける仕事である
畠山 足立さんは営業を15年以上続けてきて、営業の魅力や可能性を、どんなふうに感じていますか?
足立 営業は永遠に残り続ける仕事だということです。特に保険の営業は絶対になくならないと思います。映画の『スターウォーズ』には、C-3POやR2-D2などのドロイドが登場します。彼らは計算も早いし確率論で話をしますが、最終的な意思決定をするのは人間です。保険の現場でも2000以上ある商品の中から最適な保険料を算出するのはコンピューターの仕事です。そこに関しては、コンピューターに絶対勝てません。しかし、そもそもお客様は自分が買いたい商品を知っているのかというと、そうではないのです。自動車保険や火災保険はニーズが顕在化されているのでまだわかりやすいですが、生命保険の場合は、「俺、保険なんて知らないし」「別に入らなくてもいいや」という人が見込み客であり潜在顧客です。潜在化されたニーズにアプローチしてくのは、コンピューターにはできないと思っています。
畠山 お客様の潜在ニーズを引き出し、要望や欲求を整理して、明確に言語化してあげる。これはコンピューターにはできないから、営業はこれからも必ず残っていく仕事であるということですね。
足立 潜在ニーズって、お客様自体もわかっていないじゃないですか。営業とお客様の間でディスカッションを進めていくうちに、「なるほど、そういうことか」と顕在化されていくものです。営業が質問をすると、その質問に答えようと過去の経験や知識を引っ張り出してきて、お客様の頭の中で情報が次々と編集されていく。その結果、話し始める前と後では、お客様の頭の中が確実に変化しているんです。それなのに、変化する前に用意していた商品を売るのはおかしいですよね。
畠山 話始める前にお客様が求めていたものと、プロである営業マンと接した後で、求めるものは変わってしまう。なるほど。何が最適かを知らないお客様とコミュニケーションをとることで最適を導き出す。こうしたことが可能なのも、やっぱり営業マンが人間だからですよね。最近は残る仕事、無くなる仕事みたいな話がよくありますけども、私も同感で営業は残り続ける仕事だなって思います。人間は、“熱量”や“情”で動くことがあるじゃないですか。自分一人では決断できないけど、誰かに勇気づけられて動くとか、迷っている時に一歩踏み出して「やっぱ買おうかな」って思うのは、会話している相手が人間だからです。コンピューターに励まされたり、応援されたりしても、動けないんじゃないかと私は感じています。
“凡事徹底”こそが最強のスキル
畠山 私は「営業を極める」みたいな言葉を耳にすると、「おいおい、嘘だろ」って思います。地球上に同じお客様は一人もいませんし、まったく同じケースもありません。スポーツにも必勝法がないように、「このトークがあれば絶対に売れる」「究極の方法はこれだ」みたいなものはないじゃないですか。営業とは一生極めることができない、いわば“道”のような世界だと私は思っているのですが、足立さんの理想像というか、ゴールみたいなものはあるのですか?
足立 最終的には、お願い営業が最強ですよね。「お願いします」と言ったら、「わかりました」と言って契約してくれる。しかも単位が数百円とかじゃなくて、数千万円とか数億円のレベルで。お客様とそこまでの関係性を築くことが究極の目標です。
畠山 まさに究極ですね!その関係性を築くために欠かせないものって何でしょうか?特に最近は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、直接会えない時期でもありますから、何か気をつけていることはありますか?
足立 私自身はオフラインでもオンラインでもファーストコンタクトやファーストアプローチを大切にしています。紹介をいただいて、経営者とアポイントが取れたとします。すると目の色を変えて保険の話をいつ差し込もうかと虎視眈々に狙う感じの人が多いですよね。しかも保険の話がダメだったら、そこで社長との関係を終わらしてしまう営業マンがなんと多いことか!すごくもったいないと思いませんか?私は「まず関係性をしっかり作ってください」という教育をしています。関係性とは何かというと、実にシンプルです。「社長、また来ていいですか?」と聞いたときに、「また来ていいよ」と言ってもらえる関係性です。そこで、「社長、ちなみにどんな情報に興味や関心をお持ちですか?」と質問をしておけば、次回訪問するためのネタ探しに走ることができます。それでネタが見つかれば、また必ず会えるじゃないですか。ただ、それの繰り返しです。
畠山 そうなんですね。今の話を聞いていて、“凡事徹底”なんだなって思いました。足立さんのことだから、もしかしたらスーパートークとか、ウルトラCをお持ちなのかなって思ってました(笑)。
足立 そんな飛び道具なんてないですよ。ただ、お客様に役立つための情報収集には、かなりの時間とお金をかけていますね。その凡事徹底を、どの基準値でやるかです。
畠山 面白い!やはり凡事徹底しかないんですね。しかも、その凡事徹底を他の人とは違う基準値でやり続けると、お客様との強固な関係性が築けて、最終的にはお願い営業が可能となる。いやあ、凄い話が聞けました。
数値目標よりも“価値目標”を設定せよ
畠山 足立さんは営業の世界でずっと活躍し続けていますが、活躍し続ける人と一発屋で終わる人の違いって何だと思いますか?
足立 私の場合は、価値とか成長に対して貪欲だったんでしょうね。社会に対して価値のある存在であり続ける、価値を見出し続けるっていう理由が、私の中で一番しっくりきます。社会から求められる価値は時代の変化と共に変わり続けていきますから、「自分は変化しない」って決めた瞬間に衰退します。ですから、「価値をどれだけ高めていけるか」ということに対して貪欲な人は、常に成果を出し続け、活躍し続けると思います。
畠山 目標が「収入」や「タイトル」とかですと、活躍し続けられないものなのでしょうか?
足立 まあ、難しいでしょうね。以前、私が凄いなと感じている人に「何か目標とか決めているんですか?」って質問したら、こういう答えが返ってきました。「目標を決めたら、それが上限でしょう」って。確かにそうですよね。いわゆるセールス初心者の人は目標を設定したほうがいいと思いますが、ある程度成果を上げられるようになってきたら、数値目標よりも“価値目標”を設定したほうが伸びるでしょう。
畠山 価値目標ですか!私は「夢」っていうと自分事で、「志」っていうと社会も含めてみたいなイメージを持っています。そういう社会目線や世の中に対する価値へと昇華させていかないと、成長が止まってしまいますよね。それは心底納得します。ちなみに営業が自身の価値を高めていくために、何か足立さんがやっていることはありますか?
足立 当然かもしれませんが、インプットです。ただし、本やインターネットよりも自分の“体験”を重視しています。世界遺産をネットで見ていても面白くないですよね。やっぱり実際に行って体感しないと。私は最近筋トレをしているのですが、ネットでトレーニング動画を見てその通りにやっても、何故か上手くいきません。しかし、パーソナルトレーニングでプロに指導してもらうと、筋肉の部位への効かせ方がビックリするほど変わるんです。情報は沢山集められる時代だからこそ、実際にやってみてどうだったかという“体験”こそが、他の人と差別化された価値になりますよね。
畠山 「知る」と「学ぶ」は似て非なりですから、実際に現場で体感して学び続けることが大事なんですね。最後に営業とコンサルの違いについてお聞きしたいのですが。
足立 コンサルの役割は明確で、課題の抽出と整理、それに対する解決策の提示です。一方で営業の役割は、商品を売り切ることです。保険のコンサルは既存証券の分析をしたり、アドバイスをしたりするのが仕事ですが、保険のセールスは売り切ることが仕事です。何故ならば、売らないとお客様を守れないからです。
畠山 確かに。売っていない相手が事故や病気に遭っても、守ることができませんよね。コンサルと営業では責任の場所が違うという感じですね。コンサルは判断をするための“情報”をわかりやすく整理して提供する。営業はアクションを促し、実際に行動をさせ、商品やサービスを通じて“価値”を提供する。でも、営業の仕事を始める時って、売ることに対する罪悪感ってあるじゃないですか?
足立 いやあ、本当にね。最初のうちは、売ることに対する抵抗感ってめちゃくちゃありますからね。
畠山 私もありました。それを払拭するためには、やはり、売り切ることが価値を届ける、売り切ることが貢献である、売り切るからお客様が喜ぶといった、売る意義のセルフクロージングやマインドセットが本当に大事ですよね。先ほど足立さんがおっしゃった“何故”の部分でしょうか。「何故」「何のために」「誰のために」が明確になることで、自分のためではなく相手のために売ることができますし、その結果お客様に喜んでいただければ罪悪感や抵抗感はなくなっていきますよね。今日は本当にためになる話をたくさん聞かせていただいて、私自身、とても貴重な機会となりました。今後ともよろしくお願いいたします。
足立 哲真 氏
プロフィール
プロフィール
R&C株式会社 代表取締役 大学3年で保険セールス業界へ飛び込み、インターンとして活動。大学4年時にはMDRTのCOT基準をクリア、社会人1年目でTOTの基準を超える実績を出す。2010年フルコミッションの大手保険代理店へ転職し25歳でTOTに初登録。29歳で2億の赤字を抱えた会社を引き継ぎ、当社の代表取締役に就任。現在は借金を完済し「日本で一番お客様を守る保険代理店になる」というビジョンの下、全国24拠点、160名を超える保険代理店組織を経営している。保険乗合代理店業界で最大の所属募集人数を誇る一般社団法人保険乗合代理店協会の最年少理事や一般社団法人日本企業地震保険協会の理事長も兼務している。
畠山 良太
プロフィール
プロフィール
株式会社Ishizue 代表取締役。株式会社リクルートジョブズに入社し、営業マンとして活動を開始するも、成績が振るわず、最下位に甘んじる。桑原氏の開発した「SAプログラム」を学んだ事をきっかけにトップセールスを記録する。“自ら実践者でありながら、会社に依存しない人材を輩出し続ける”というミッションのもと自身で営業活動を続ける傍ら、営業サラリーマンのセールスセコンド事業を全国で展開。営業成績ビリからTOPとして表彰される営業マンを多数輩出しながら、2019年には自社が営む2つの代理店事業で契約数日本一を同時獲得する。